子どもとご褒美の関係
ご褒美とトロフィーには深~いご縁があります。今回は、子どもとご褒美の観点から表彰をひも解いていきます。早速ですが、「○○したら、ご褒美をあげるよ」と、子どもに対して口にしたことのあるお母さん、お父さんはかなりいるのではないでしょうか。目の前にニンジンがぶら下がると、馬じゃあるまいし……なんて思いきや、俄然、○○めざして走りだすものなんです、あやつらは! 反面、「ご褒美で釣らないとやらせられないなんて……」という罪悪感を持ったり、「ご褒美めあてでやっていて本当に身につくのだろうか?」と心配されたりしている親御さんは多いはずです。かくいう私もその一人ですが……。
それは「ご褒美で釣るなんて子どものためになりませんよ」「ほめて、やる気を出させないと」といった、教育分野でまことしやかに説かれている主張を耳にしたことがあるからだと思います。しかしこの主張に一石を投じてくれている方がいます。『「学力」の経済学』(中室牧子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者です。著者いわく、教育経済学という分野から科学的根拠に基づいて出した答えは、「ご褒美で釣ってもよい」だそうです。いったい、どういうこと!?
人は目先のことに惑わされがち
例えば、勉強。親は「今勉強しておくのがあなたのため」という思いがありますよね? この親の言い分である将来のためというのは、経済学的にも正しいと著者はいいます。経済学によって、子どものころちゃんと勉強した人は将来の収入が高くなるということが数字で示されているそうです。やっぱり! まあ、経済学に頼らなくても、そうであろうとは身をもって知っていましたが。それは、おいといて。ならばなぜ将来の高収入をめざして子どもたちは勉強しないのでしょうか。
実は、人間にはどうも目先の利益が大きく見えてしまう性質があり、それゆえに、遠い将来のことなら冷静に考えて賢い選択ができても、近い将来のことだと、たとえ小さくともすぐに得られる満足を大切にしてしまうのです。(第2章「子どもを“ご褒美”で釣ってはいけないのか?」より)
確かに、子どもは目先の楽しいゲームやテレビ、遊びに気持ちを奪われがちです。私も大人になってから、あのときの親の言葉が身に沁みています……。子どものこと言えないって(汗)。いや、だからです。覚えがあるからこそ、つい、自分の子どもにはって思うんです。実は大人になったって、本質は変わりません。体に悪いと知りつつ、高カロリーのものやお酒をついつい過ぎてしまうなってことありますね? 人間って、そういう生き物なんだそうです。チーン。でも諦めないで! 対処方法はありますので次項へどうぞ。
科学的根拠を基に行き着いた答え
いよいよ、本題です。この目先の利益や満足を優先させがちなことを逆手に捉えて考えるといいようです。
「目先の利益や満足をつい優先してしまう」ということは、裏を返せば「目の前のご褒美をぶら下げられると、今、勉強することの利益や満足が高まり、それを優先する」ということでもあります。実は、子どもにすぐに得られるご褒美を与える「目の前ににんじん」作戦は、この性質を逆に利用し、子どもを今勉強するように仕向け、勉強することを先送りさせないという戦略なのです。(第2章「子どもを“ご褒美”で釣ってはいけないのか?」より)
ご褒美が子どもの学力にどのような因果効果を持つかについては、ジョン・ベイツ・クラーク賞の受賞者でもあるハーバード大学のフライヤー教授が行い、効果が見出されています。いわゆる科学的根拠に基づいて考えて、子どもにやる気を出せるツールとして、「ご褒美はあり!」だということです。また、「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちも失わせるものではないという、検証も出ていますから、ご安心ください。
ただ、注意したい点もあります。ご褒美をやみくもに与えても効果はないと本書では指摘しています。勉強でいうと、テストの点数など「アウトプット」ではなく、勉強時間や読書、宿題をするなどの「インプット」に対して与えるのがいいそうです。本質的に学習したことが身につくであろうことに、すかさずご褒美を投入ってことですね。
ご褒美に「トロフィー」を
さて、肝心のご褒美に何を与えたらいいのかですが、本書では「お金」と「約400円という安物トロフィー」をご褒美にして、その因果効果を探った実験を紹介しています。なんと! 小学生に対しては同額のお金よりも、同額のトロフィーのほうが大きな効果があったそうです。トロフィー生活スタッフとしては、トロフィーの価値がこんなところで認められていたのかと、つい興奮してしまったくだりです。中室先生グッジョブ! 「子どものやる気を刺激するためにトロフィーをご褒美に与えましょう」は、科学的根拠に基づいている事実なんですね。これからも自信を持って、みなさまにトロフィーの大切さを伝えたいと思います。最後になりましたが、本書は子育てを多角的に見ることができる新たな指南書としてもおススメです。そうそう、ご褒美ですが、中高生以上になるとトロフィーよりもお金のほうが効果的とあったので気をつけてくださいな(^_-)-☆