人間の意思や行動を決めるのは、ある「刺激」だった?

私たちの行動は決められている!?

あなたの今の選択は、本当にあなたの決めたことだと言い切れるでしょうか。自由に考え、行動していると思っていても、実は誰かの思わくどおりになっているとしたら……。なんだかミステリー小説みたいな話ですが、程度の差こそあれ“ある”ことなのです。操り人形のように思いどおりに他人を動かすことは、それこそマインドコントロールや魔法やらを使わないと無理そうですが、仕向けることはできます。今回は、その引き金になっている人間の意思や行動を変化させるような刺激「インセンティブ」について考えてみたいと思います。

「外部から与える刺激」

インセンティブとは、人の意欲を引き出すために「外部から与える刺激」のことを指します。ビジネスや社会的な仕組みの中では、社員の意欲向上や目標達成するための動機づけだけでなく、消費者の購買意欲を駆り立てる目的でも用いられる重要な概念となっています。例えば、給与やボーナスとは別に、個人の一定期間の売り上げや目標達成率に対して報酬を与える制度もインセンティブの一つです。目の前のニンジンではありませんが、ガンバリが収入に反映されるとあれば、やる気も倍増します。もっと身近な例でいえば、景品付き商品や、○点以上購入で割引、今なら○○プレゼントなどは、消費者インセンティブと呼ばれています。+アルファがほしいわけではなかったのに、つい必要以上のものを買ってしまった……なんてことありませんか?

インセンティブは金銭的なものに限らない

金銭的なインセンティブはかなりの誘因力がありますが、仕掛ける側としては、費用的な限界もあります。しかし、注目してほしいのが、インセンティブは何も金銭的なものに限らないということです。実は、私たちは金銭的以外のインセンティブにも反応して行動しています。「誰かからの期待」であったり、「やるべきことの価値」であったり、「他人からの賞賛」であったりなどもそうです。そもそも人間は、他人から認められたいという感情(承認欲求)を持っていると、アメリカの心理学者であるアブハム・マズローが指摘しています。これは、食べたい、飲みたい、寝たいなどの欲求(生理的欲求)など物質的な欲求よりも高度で、精神的な欲求と言われています。生理的欲求に比べて、自覚症状は感じにくいかもしれませんが、欲求ですから、誰しも持っているものなのです。

表彰制度はコスパ抜群

この承認欲求に影響を与えるインセンティブとして注目されているのが「表彰制度」です。単に欲求を満たすだけではなく、「仕事にやりがいを感じる」「仕事を通じて自己実現する」などのモチベーション(主体的な動機づけ)向上にもつながります。外からの動機づけである「インセンティブ」と、内側から出る動機づけの「モチベーション」は似て非なるものですが、インセンティブをうまく使うことで、モチベーションを上げることができるのです。

会社組織でいえば、限られた人材で最高のパフォーマンスを実現するためには、社員のモチベーション向上が欠かせません。費用対効果を考えても、「表彰制度」は最適です。例えば、現金1万円を100人に支給するのも、100万円かけて参加者100人・受賞者数人の表彰式をするのもかかるコストは変わりません。しかし、付加価値があるので、表彰式の方がより高いインセンティブ効果が見込まれるのです。受賞者は「会社や周囲の人から認められる」という承認欲求が満たされます。参加者にも、今回は対象でなくても、「次は自分も!」というモチベーションを与えることができます。

どんなインセンティブを使って、人の意思や行動にどう変化を加えていくのか――。人間心理を考えれば、さまざまな可能性が生まれてきます。なかでも「表彰制度」のもたらす変化は未知数です。ぜひ、お試しください。