顧客よりも先に社員の満足度(ES)を
企業が業績アップを目指すとき、まずはサービスや製品・商品の向上や充実へとベクトルが向きがちです。しかし、実際にそのサービスを企画したり、開発したり、提供したりするのは「人」です。すばらしい発想であっても、そこに携わる人の力量ややる気が伴っていなかったら……。やはり、組織づくりを考えたら、この基礎となる部分が大切になってきます。ここでは人材に焦点を当てて、その指標の一つとなっている従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)について考えたいと思います。ESは、社員が会社や仕事に満足しているかをはかるもので、顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)の向上や人材マネジメントの一環として欠かせない概念です。
ES低下が招く負のスパイラル
ESが不十分な場合、「仕事意欲の低下」「業務効率の低下」「離職者の増加」「企業理念や経営方針の不徹底」など、さまざまな悪影響が考えられます。そうなるとサービス、製品・商品の企画、開発をする力の低下、品質のばらつき、顧客から不信感を持たれるなどもあるかもしれません。CSの向上は業績向上に不可欠とされていますが、ESもまた密接にかかわっているのです。逆に、ESが充実したことで、結果としてパフォーマンスが上がり、CS向上、業績アップへとつながるという例も見られています。
自社のESを知りたい場合は、専門に調査してくれるところがありますので、利用されるのもいいでしょう。ただ最近では、社員が仕事に求めるものは報酬や休暇などの待遇面だけでなく、やりがいや自己成長の機会、企業文化への共感、ワークライフバランスなど、多岐に渡っています。その人、その人によって、会社や仕事に求めているものが違う時代ですので、一概に改善できないのが難しいところです。
意外に少ない!? 表彰制度のある会社
しかし、不変的なものもあります。それは誰しも、会社に、上司や同僚に認められたいという気持ち(承認欲求)があるということです。承認欲求を充足させることであれば、どの会社においても有効なES向上法と言えるでしょう。例えば、その一つが表彰制度です。
株式会社サーベイリサーチセンターが2014年に行った『職場における「ほめる効果」に関するアンケート(SRC自主調査004)』によると、表彰制度等のほめるしくみがある企業(公務員含む)4割のうち7割以上の社員が「やる気の向上に効果がある」と回答しています。年代別の結果を見てみると(図1)、特に20代では16.4%の方が「大いに効果があると思う」と答えており、人材育成ツールとしても表彰制度の大きな可能性が示されています。また、同調査では、ほめられている人のほうが、挑戦意欲、仕事への満足、仕事への楽しみ、自信、誇りを高く持ち、自分に対しても肯定的だという結果も出ています。
図1 表彰制度などによる従業員のやる気向上への効果〈年代別の結果〉
仕事への意欲を高める、やりがいを感じるなどは、個人任せではばらつきが出てきてしまうもので、潜在的な力がありながらも発揮できないといったケースもあります。やはり、会社として意識的に行っていくことが必要なのです。表彰制度を取り入れている企業が4割ほどですから、まだ多くの企業に改善の余地があるということですね。
企業成長につながるトロフィーの活用法
表彰制度で会社や仕事に対する意識を高めていく方法としては、ポピュラーなものに「社長賞」「MVP:Most Valuable Player」などの個人やチーム、部署の業績アップや功績を称える表彰があります。ほかにも、「努力賞」「奨励賞」など目立たないが組織の縁の下の力持ち的な働きを認める表彰、「グッドジョブ賞」などでちょっとした事例を取り上げて職場の雰囲気や人間関係をよくする表彰など、さまざまです。表彰制度を成功させるための秘訣は、特定の職種や部署に偏らないよう、あらゆる人が対象になるように配慮することです。トロフィーを活用した承認欲求の充足は、企業成長のカギを握っているともいえるのです。