がんさんのいた街・・・立川①

平成29年が明け、また1年が動き始めました。今年はどんな年になるのだろう、いやいやどんな年にしてやろうとわくわくしていたのですが、すでに2月になっておりました。まず月日の早さに負けぬ様に1日単位に1日を大切に使おうとそんなスタートに相成りました。今年から我が社㈱立川徽章の44年前のあの日から丁寧に回想し、精一杯生きた、生きている㈱立川徽章を静かに語りたい、そんな気持ちの始まりです。

昭和49年 春 幼稚園の廃墟にて

昭和49年春 ㈱立川徽章はこんな場所から歩み始める事になりました。それは幼稚園の廃墟です。昭和49年がスタートし、がんさんとこの年の2月に結婚をしたふみさんはがんさんとふたり、今、中央線立川駅下車南口の商店街を通りある場所に向かっていました。

昭和49年の立川駅南口は、まだまだ昭和そのものでしたが、立川市の歴史を調べたところ、今の素晴らしい立川の街の構想がまさにこの年から始まっていた様でした。

  • 市民会館開館。         【当時はある事すら知らず……】
  • 立川基本構想策定。       【この構想は成功しましたね。今や立川はすごい!】
  • 開発部の南口事務所設置。    【南口の駅前は暗いイメージでしたからね~】
  • 南口区画整理一部移転工事に着手。【どこからかもう始まっていたんですか、工事が……】
  • 市の木「ケヤキ」・市の花「コブシ」決まる【数十年後、我社でこぶしの花のブローチとタイピンを作成】

さて、そんな個人商店が多く立ち並ぶ通りを20分ほど歩いて行き着いた場所は、木造の薄緑色の幼稚園の廃墟でした。その建物を見つけ、その建物の前に立ったがんさんとふみさんは少しの沈黙の後……がんさんは言いました。

ここでやる!     と独り事の様に……

ふみさんはその独り事をしっかり聞いてしまいました。そして心の中で思わず……(声には出さず)

【ん???・・ええ~何言ってるの??商売をするんでしょ??こんな所でできるわけないじゃない???】

立川駅から15分と言えども、商店街を抜けると住宅街の細い道を通り、車の出入りも難しく、周りには小さな釣堀があり、一人、二人がのんびりと糸を垂らしている、木々は生い茂り、夏には絶対虫がでると確信をしたふみさん。自然が残っていると言えばそうだが、商売する場所ではない。

何と言ったってその木造の建物は古くて、こぶしで叩けば木造の板が割れそうに見えたのです。ふみさんの足をその場にとどめて一歩も前に進めさせなかったのですから。そうそう倒れそうな昔ながらの薄汚れたブロック塀もです。

【がんさ~ん、わ・た・し 無理~です。】

当然、がんさんと結婚したふみさん、これから2人で商売をすると決めたのだから、私にも選ぶ権利はあるはずと勝手に思っていたのですが……

「まず広いよな」         【まあね、幼稚園なんだから・・】

「ここに何台車止められる」    【まあね、園庭だから・・5~6台はいけるかな・・】

「駐車場借りたらどうなる」    【まあね、全て込みの家賃らしいし・・】

「駅から徒歩15分だよな」    【まあね、楽に歩けるかな・・】

 

誰に問いかけているのか、また独り言?!

ふみさんもそのがんさんの独り言に心の中で反応している事に気づいているのかいないのか?!

するとがんさんは次の行動に出たのです。その木造の建物の引き戸を開け、その建物の中へ……

【ええ~入るの~】

ふみさんの止まっていた足も仕方なく一歩二歩とがんさんの後について行く事に……

【やめよ~がんさ~ん!】

【そもそも 今 鍵開けた?  開けっ放しだったの?】

【まあ、入ろうと思えばどこからでも入れるか】

勿論、今日は大家さんに許可頂いていますよ。

電気はつきました。中は想像通りでした。最初の部屋は多分、先生達のいた場所・職員室、その部屋から木造の引き戸を開けると廊下だった。とりあえず左へ、すぐ階段らしきものがありました。

【ええ~2階もあるの~】

どうもちょっとしたスペースがあるだけの2階の様でした。そこを過ぎると、右にトイレと水道が6ヶ所くらいある手洗い場所、その奥に6畳ほどの部屋がありました。

【ここは何に使っていたのだろう】  ふみさんも気がつけば興味津々……まあまあいいでしょ。

がんさんとふみさんは恐る恐るその廊下を戻り、先ほど先生たちのいた場所であろう部屋を右に見ながら、さらに廊下を歩いて行くと、その終点は広い広い部屋が待っていました。子どもたちが遊ぶ声、お昼寝もしたのかな~先生を困らせた子どもたちもいて、先生もたまに怒ったり、笑ったり、そうそうお遊戯とかもしたんだろうなあと、本当にそんな事を思わせる様な空間がそこにはありました。

【ふみさん!どうしたの? さっきとぜんぜん違う顔しているよ。】

【そうかしら?!でも何だかここが私たちの場所?そんな気がしてきちゃって、不思議なんだけど??……】

がんさんはもう決めていた様で、何か計ったり、窓の外を見たり、壁を叩いたり、気持ちはふみさんよりずっと前に進んでいた様でした。

その時は2人の間で話題にならなかったのが不思議なのですが、トイレも12個ぐらいありましたし、手洗い場所も6ヶ所,お分かりですよね、すべて幼稚園児サイズだったのです。先生たちはどうしてたの?2人で話題にならなっかたのは、当然大人用もあると無意識に思っていただけだったんです。でもなかったんですね~大人用は。手洗い場所も園児たちの身長に合わせた高さでした。

がんさんの身長は181cmけして太ってはいませんでしたが、181cmの大男が、このちっちゃな手洗い場で窮屈そうに体を縮めて毎日手を洗うかと思うと……なかなか面白い事になりそうですよ。

その日から、がんさんとふみさんの気持ちはひとつになり、同じ方向を見始めたのでした。

2人でその廃墟から出た時、今日は小春日和の暖かな日だと初めて気づき、駅までの帰り道、がんさんとふみさんには何の不安も怖さもなく、ただこれから2人で人生を歩んで行く事の喜びに溢れていました。

がんさん 26歳     ふみさん  22歳

 

でも、何で?幼稚園の廃墟?との出会いがあったかって??

さらに昭和をさかのぼって語りますよ。ここにも、愛があったんですね。ええ 素敵なお話です。