梅雨の頃、㈱立川徽章の社屋の向かって右に、紫陽花が咲き誇ります。
何年も前に花屋さんの店先の鉢を買い、花が終わる頃、地面に何気に植え替えたのですが、今年も大きな花を咲かせているのです。
ほとんど人の目に触れない場所でありながら…健気です…
【がんさんのいた街…立川】を読んで下さる皆さんをいつもは昭和49年の頃に半ば強引に引き戻していますが、今回⑤はリアルタイムの㈱立川徽章の笑顔を届けたくなりました。そんな気持ちになったのは、こんな出来事があったからだと思います。
61歳…Nさん 退職の日
今年のあの健気な紫陽花を見る事なく、5月20日付でみんなに惜しまれつつ退職した61歳の野球大好きNさんのお話です。
Nさんはヨボヨボになるまで、〔ごめんなさい、Nさん〕 ㈱立川徽章にいてくれると誰もが勝手に思っていたと思います。しかし、時代の流れは時に年を重ねてきた人にある決断をさせる――。
㈱立川徽章は現在二代目社長がその経営に携わっていますが、Nさんは先代社長を最もよく知る人の一人でした。Nさんはその先代社長を心から慕い、自分の営業車に先代社長の誕生日をナンバープレートにしたいと願い出たほどです。そして、時には、古くなった社屋は時々みんなを困らせます。そんな時はいろいろ工夫して、職人さんの様に修理をしてくれるのです。その職人技は社内のあちこちに感じます。
退職の日 その日は金曜日で、二代目社長はいつもなら新宿店に行く事になっているのですが、最後の朝礼とあって急遽朝礼に顔を揃えました。
朝礼の担当者は毎日変わります。事務的な報告が終わると、担当者は最近気づいた事や経験した事を…短く終わる人、長く話す人、それぞれですが、とにかくみんなの前で話をするのです。最近は心理テストや運動を取り入れる担当者もいて、なかなか面白い!です。
通常の金曜日の朝礼は常務が仕切る事になっているのですが、本日はそうはいきません。
社長でなくてはいけないのです。
9時になりました。いつもの様にみんなが事務所に集まり、いよいよ朝礼が始まります。
「おはようございます!」 ...社長の一声
「おはようございます!」...全員の元気な声が手狭になった事務所に響きます。
本日の予定、勤怠状況が告げられる、いつもの出だしです。それぞれが本日のスケジュールを頭の中で確認する瞬間でもあり、また、今日1日頑張ろうとする瞬間でもあるのです。
さて、本日は特別な朝礼。長きに渡り尽力してくれた方が退職する、最後の日。
みんなも多少の緊張とともに、社長の言葉に集中。
〔いよいよ始まりますよ,中川社長頑張って!〕…ところが…です…??
「今日はNさんの最後の日です。Nさんは…」
と話し始めるや否や…突然声を詰まらせ下を向いた二代目社長。
どうした、どうした …….??
事務所は静寂とともに、みんなは突然の状況にどうしたらいいか戸惑う。30秒、いや1分沈黙が続く。と 社長は声を振り絞り、
「すみません、Nさん! 先に挨拶をお願い…します」 精一杯の声だった。
Nさんも感無量だったと思いますがそこは61歳…落ち着いた表情で前に出ました。㈱立川徽章での思い出や最後の挨拶を…一期一会とはいえ、お別れはどんな時も寂しさが付きまとう。Nさんの最後の言葉に全員が聞き入っていました。
社長も下を向いたまま聞き入り、何とか落ち着きを取り戻そうとしていました。
Nさんへの気持ちを形に…
㈱立川徽章はカップ、トロフィー、表彰品のプロの集団です。ここは現在、売上を伸ばしているオリジナルクリスタルトロフィーの出番です。
売上 NO1! クリスタルトロフィー の登場です!
世の中にクリスタル表彰品は数知れず、でも、でもです。㈱立川徽章の表彰品ほど、心のこもった、社員、パートさんの思いがこもったトロフィーが…他に..あるだ…ろうか..
〔待て待て、世の中のすべてをリサーチしたわけでもなく、世界は広い! あるかも知れない!〕
いや、我が社のトロフィーには心がある。社員、パートさんの愛を詰め込んで届けている。
〔 間違いない! 〕
そもそも、㈱立川徽章の商品は、表彰品である。そこに愛を入れなかったらただのガラス? 板? プラスチック? 真鍮?
私どもは、ここにお客様の思いを言葉やイラストや文字で表現し、愛を吹き込む仕事だとそれが、
【社長、役員、社員、パートさん、全員の、㈱立川徽章全員の、総意!】 なのだと思います。
〔ちょっと格好良すぎて..照れますが…〕
㈱立川徽章の商品を語るとつい熱くなってしまって、大切なNさんがどこへ行ってしまったでしょうか。
Nさ~ん。
いました、いました。Nさんは今、この溢れんばかりの愛のこもったクリスタルトロフィーを社長から受け取っているところです。これがまたNさんの似顔絵の入った弊社自慢のオリジナルで作製した超ステキ!な贈り物。 この似顔絵 弊社が誇るトロフィーデザイナーの傑作!
プロとは言え、あまりの出来ばえの素晴らしさに全員 目がテン! になりました。
社長も少し落ち着きを取り戻し、笑顔で渡しています。
その場面を常務が写真を撮りました。証拠写真?? ではなく 大切な思い出写真をです。
次の場面はやはり、華やかな お花 ですよね。お花なくしてこの場は盛り上がりません。
やはり、ここは長年一緒に仕事をしてきた女性Sさんからでしょう。素敵なお花がSさんから渡されました。ここで常務が写真家として再び登場、ところが、
いい いい とお花を渡したNさんは、 恥ずかしそうに、その場を離れるのでした。
中川社長の涙のわけ
泣き崩れた社長もすっかり落ち着き、Nさんへの最後の感謝の気持ちと今後の人生にエールを送り、みんなも短い時間の出来事ではありましたが、充実した時間だったと…そんな空気が流れていました。
あの昭和49年に登場の22歳だったふみさんは現在も㈱立川徽章の専務として、今朝のこの朝礼の場にいます。ふみさんも66歳になったんですね。
朝礼の時、端の方にいた専務ふみさん、社長が涙で言葉がでなかった瞬間、
ふみさんは心で叫びました。 〔社長! そこで泣いちゃだめでしょ〕
その日の午後二代目社長はふみさんにこんな話をしてくれました。
【今朝の朝礼、やあ、まいった。自分が、病いで倒れ、その時の苦しみ、辛さ、時に自暴自棄になった自分の姿があの瞬間、走馬灯の様に思い出され、その時、中山さんの励ましや言葉が思い出され、言葉に詰まってしまった】 と……照れくさそうに社長が言ったのです……………………………….
〔長いドットですみません、ふみさんも胸がつまり、言葉を失うのでした〕
人の苦しみ、辛さは、周りが思う以上に、本人にしかわからない感情がある事を改めて感じる瞬間でもありました。しばらく沈黙があり、その後社長はいつもの社長に戻っていました。
現在、二代目社長は、そんな事あったの!と思うくらい、とっても元気です。
みんなの反応??
数日経ったある日、
女性社員Aさん Nさんの退職も悲しかったけど、社長の涙にもらい泣きし、感動しました。
男性社員Bさん 社長がみんなの前で泣く、あんな弱い所をみせて凄いと思った
男性社員Cさん 社長の泣く姿をみて、男でも弱い所見せていいんだと心が楽になった
ふみさん、若い社員の反応にちょっとびっくり! でもそれは社長の素直な心からの涙だったからだと思いました。弱い所が見せられる人は強い人だと…ふみさんは思うのでした。
こうして退職したNさん。考え抜いた決断はNさんにとって人生の後半を笑顔で過ごされる事を心から願って
特別な日の朝礼は無事終了! みんな自分の仕事を開始!
今日も頑張るぞ!
お疲れさま。そして…有難うございます。 Nさん!
ここに、Nさんが心から慕ってくれた初代社長…がんさんの姿のない事を最後に書き添えておきましょう。