ほめられたい男 認められたい女

ほめられたい男 認められたい女

「ほめて伸ばす」。ビジネスでの人材育成や子育ての分野でよく目にするキーワードなので、誰かを育てる立場の人なら興味を引かれたこともあるのではないでしょうか。実際に「ほめる」はすばらしい効果を生むことは確かですが、ただほめればいいというわけではないのが難しいところです。同じほめ言葉でも、響く相手もいれば、そうでもない相手が出てきます。その人に合った「ほめる」を実践できればいいのですが、これには10人いれば10人違う個性に合わせた「オーダーメイド版ほめる力」が必要。攻略レベルが高めなのでもう少し場数を踏んでからにするとして……、まずはもっと簡単に、でも確実に効果が出る「ほめる」を紹介します。それは、ほめる相手が男性か、女性か! に着目することです。科学的にも証明されている「男女別のほめるセオリー」とは!?

すれ違う男と女

女の言い分「なんで察してくれないの?」

男の言い分「なんで、すぐ感情的になるんだ?」

日常生活の中でこのセリフ、よく思い浮かびませんか? たいていの女性は「お願いする前に自分から察して態度や行動で示してよ」と思っているし、男性は「言ってくれればやるのに。急に感情的に怒られても訳がわからない」と思っているようです。筆者は女性ですが、先日の週末、朝ご飯の用意をしながら、昼食の下準備を進め、洗濯物が今日中に乾くように早く干さなければと考えつつ洗濯機のスイッチを入れて、猫のトイレ掃除にエサやり、子どもの「お母さん、あれがない、これがない、これやって」攻撃に対応していたところ、何もせずにボンヤリしている夫(かなり悪意ある主観!?)が視界に入りキレそうになりました。ちなみに夫は、亭主関白というわけではないし、お願い(指示ともいう)すれば、それなりにやってくれる普通の人だと思います。どうやら家事や育児は妻の仕事だからと任せているわけでもない様子。ではなぜ、忙しそうな私が見えているはずなのにここまで無関心を装えるのか(怒)と不思議でならなかったのですが、そもそもほとんどの男性はその事実を感知すらしていないらしいのです! 衝撃の事実!!

なんと脳科学的見地からいくと男性と女性では、脳の働き方に差異があるため、考え方や捉え方が違うのは当たり前だそうです。「なんだ、見えているようで見てなかったのか! それなら仕方ないわね~」と流せるものでもありませんが、ただイライラ・モヤモヤするよりは腑に落ちた感があります。それも、すれ違ってしまういわゆる問題点を認識し、お互いを理解する努力をすることで、わかり合えるかもしれないというではありませんか。これは男女のコミュニケーションが発生する場であれば、どのようなシチュエーションでも参考になります。ぜひ、共有しましょう! すみません、興奮してしまいました。でも、現代人のストレスの一つはわかってくれない異性にあると思いませんか?

男女の脳はこんなに違う

まずは、脳にどのような男女差があるのか見ていきましょう。もちろん性差とは別に、個人差もかなりあるわけですが、脳科学では男性脳、女性脳でそれぞれ特徴があることがわかっています。これを知ることで、異性の???な考えや行動の受け止め方が自分の中で変わってくるかもしれません。

◆左脳優位と右脳優位

脳には左脳と右脳があり、それぞれ違う役割を持っています。左脳は人間的な脳と呼ばれ、論理的な思考を司っています。一方、右脳は動物的な脳と呼ばれ、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの五感や直感、感情、空間把握を司ります。男性の脳、女性の脳とも構造や機能は同じですが、どちらかというと男性は左脳優位で、女性は右脳優位で機能しているといわれています。

男性が論理性を重視し蘊蓄を語りがちなのも、女性が感性や直感を刺激されて感情を波立たせやすいのも、この優位性が影響していると考えられます。女性は感性が先に立つので周囲と感情を共有することに重きをおいて共感を求める傾向にありますが、男性にしたらそもそも興味がない分野というわけです。

◆一点集中型と並行処理型

左脳と右脳は連携して情報をやりとりしていますが、二つの脳をつなぐ「脳梁(のうりょう)」という神経の束も男女によって違いがあります。ある統計データによると、女性は男性に比べて脳梁の神経線維の数が多く約20%も太いそうです。女性は脳梁が太い分、左脳と右脳との情報の行き来が多いため、男性よりも脳をバランスよく使う傾向があるといいます。

女性脳はさまざまな部位の連携がいいので、感じたことがすぐに言葉になり、他愛のない情報であってもとどめておくことが得意です。アウトプットするときは、一つの情報から多くの情報を引き出して推測します。つまり、女性脳は複数のことを同時に行う並行処理型ということができます。一方、男性脳は、情報をあちこちに分散させたり、感情と連動させたり、複数のことを同時に考えたりすることは得手ではありません。しかし、逆に一つのことをとことん突き詰めていくのに長けています。マニアックなまでに探求していく男性脳は一点集中型といえます。

女性脳のほうが物事に臨機応変に対応できてよさそうですが、処理から処理への切り替えにはロスタイムが発生するので、一点集中型の男性脳の使い方のほうが効率的だともいわれています。

◆男性ホルモンと女性ホルモン

脳の働きには、ホルモンの分泌量も大きく関わっています。男性脳は後天的に作られるといわれていますが、胎児の最初のころは、男の子の脳も女の子の脳も変わらないそうです。妊娠中期から後期にかけて、男の子に男性ホルモンのテストステロンが大量分泌されることによって、男性脳が際立ってきます。テストステロンは縄張り意識や闘争心をもたらし、さらに意欲や好奇心を生み出していくホルモンなのです。先述した脳梁も、このテストステロンの作用で細くなります。女性にもテストステロンは分泌されているのですが、男性のほうが女性よりも10%~20%も多く分泌されているということです。

一方、女性脳に関連してくるのが、女性の生理周期に関わってくるエストロゲンです。この女性ホルモンは、脳を広範囲に活性化する作用があり、学習能力や記憶力、思考にも大きな影響をもたらしています。女性の「より細かくできごとの順序を思い出すことができる」といった芸当には、エストロゲンが関与しているといわれています。

進化の過程で得た能力

こうした男性脳、女性脳は、人類の進化の過程で特徴づけられてきたともいえます。はるか昔、ヒトは獲物を狩り、採集をしたりして、集団で暮らしていました。現代のように人間が地球上を制しているような状態ではないので、危害を及ぼす動物から身を守る術も必要だったでしょう。この環境下で、男女の役割は明確でした。男性は、狩猟をし、兵士として戦場に行く。女性は、子どもを生み育て、家庭を守るということです。

◆危険を冒してもチャレンジしたい男

男性脳の特徴である、縄張り意識や闘争心が強いというのは、狩猟に出かける男性ならではのもの。危険なことにチャレンジしなければ、生き残れなかったからです。手柄を立てたものが優位になり、次へとつながっていくので、競争に勝つことに大きな意味を見出すようになりました。また、狩猟や戦場での行動はチームによる集団作業です。要領のいい段取り、すばやい決断、簡潔な伝達をしなければ、標的を逃すことになってしまいます。常に論理的に効率よく問題を解決しようと考えるのは、男の性といえます。

「女は深く見る、男は遠くを見る」(ドイツの劇作家:グラッペ『ドン・ジュアンとファウスト』より)という名言がありますが、男性は目の前の些細なことは気にせず、記憶も自分のこだわりの範疇になければ驚くほどあいまいです。パートナーとのケンカの内容などは覚えていないのも日常茶飯事で、拍子抜けした経験を持つ女性も多いのではないでしょうか。そもそも狩猟や戦場で危険にあったことを鮮明に覚えていたのでは、次に危険を冒してでも挑むという気持ちが湧きにくくなってしまいますから、仕方のない話だということですね。とぼけているわけではなく、機能的に覚えていられないというわけです。

◆できるだけリスクをとりたくない女

男性と違って育児を担っていた女性には、微妙なサインやシグナルに気づくという、別の能力が発達しました。これは子どもを育てるために役立つことから進化してきたといわれています。生まれたての赤ちゃんは、言葉を話せません。快・不快、欲求といった感情を顔の表情や泣き方のトーンなどで表現しますが、この非言語的な合図を敏感に捉えることが子どもを無事に育てるのに必要だったのです。

また、集団で協力しながら子育てしてきた女性にとって、その中で良好な人間関係を築くことも欠かせませんでした。子どもを危険な状況に陥らせないために、無用な争いを避けたり、安全な水場や食用に適している動植物などの重要な情報を交換したり、記憶したりすることが求められていたからです。女性は会話好きといわれますが、これには話し合うことによって関係性を深めるという目的があります。会話をすれば自分の気持ちが相手に伝わるし、相手の気持ちも理解できるというわけです。女性の気分や感情をキャッチする力や、優れた話し言葉の記憶力といった能力はこうして磨かれてきました。

「ストレス」という観点からも男女に違いがあります。女性は男性よりもストレスを多く感じとりますが、実は女性のほうがうつ病から自殺にまで追い込まれる人が少ないそうです。なぜかというと、男性はストレスを一人で抱え込みがちであるのに対して、女性は周囲に助けを求めて対処しようとするからといわれています。男性は戦う性ですから、危機に直面すると戦うか逃げるための態勢を整える習性がありますが、女性の場合、幼い子どもがいればなおさら、その後の生活に支障をきたす攻撃も逃走も得策ではないと考えます。リスクをできるだけとらずにすむ、最終的に子どもを守る確率の高い方法を選ぼうとするのです。

男と女ではほめるツボが違う

男性と女性とでは、喜びを感じるほめられ方も変わってきます。男性同士、女性同士であれば共有する気持ちは似ていますが、異性になると別です。ほめ方のポイントを押さえておきましょう。

◆男性には自尊心を刺激するほめ言葉

男性は他者に勝ちたいという競争意識が強いので、集団の中での順位付けを重視します。競争の過程では公平さを求めますが、評価としては「不公平を喜ぶ」のが男性です。成果に対しての正当な評価がなければ、途端にやる気を失ってしまうので注意が必要です。

また、社会的に人に認められたいという気持ちが女性より強く働くので、プライドを傷つけるような言葉は厳禁です。逆にいえば、「データを分析させたら、君の右に出るものはいないね。期待しているよ」など、自尊心を刺激するほめ言葉が有効です。大勢の前で大げさにほめるなどの仕掛けも、自己顕示欲が満たされて強く満足します。

◆女性には存在を認めるほめ言葉

女性はというと、男性と違って上下関係を作る意識がほとんどありません。公平さを求めるので、不公平さを感じとると強い不満を覚えてしまいます。「他人が自分をどう思っているか」という情報をキャッチしやすい女性に対しては、「あなたが一番できる」をアピールするよりも、共感の気持ちを示したほめ言葉のほうが伝わります。

共感を示すには、相手に「わかってもらっている」と感じてもらうことが大切です。「あなたがいてくれるから」「あなたに任せておけば」などの存在自体を認める言葉や、「ありがとう」「感謝している」などのねぎらいの言葉をかけてほめるといいでしょう。自分が重要な役割を果たしていることを再認識することができて喜びを感じます。なお、職場で女性をほめるときは、仕事のことを中心にしたほうが無難です。容姿に関してほめたり、「いい奥さんになれるよ」といった固定観念に囚われたりしたほめ方は、価値観が多様化している現代なのでやめておきましょう。

コミュニケーション手段「ほめる」の活用を!

「男は外で仕事をし、女は家庭を守るべきだ」といった社会通念はなくなりつつあります。これまで培われてきた男性脳、女性脳の特徴は薄らぎ、両者の脳は個々に置かれた状況に合わせてハイブリッド化するときがくるかもしれません。しかし、現段階においては、遺伝子レベルに組み込まれてきた性差の特徴は健在です。男性にとって女性は、女性にとって男性は、身近にいる異星人といっても過言ではないでしょう。ただ、それにも増して、共通点があることも確かなのです。お互いの考え方や見え方の特徴を理解し、よい部分は取り入れて歩み寄ることで人生は豊かになります。

結局のところ、コミュニケーションをとること! なのです。考えや言葉が理解不能であれば、ジェスチャーやハグで乗り切りましょう。男はほめられたいし、女は認められたいということをわかっていればいけます。優れたコミュニケーション手段である「ほめる」の活用をぜひお薦めします。

 

参考文献:
『すぐ忘れる男 決して忘れない女』マリアン・レガト著(朝日文庫)
『キレル女 懲りない男ーー男と女の脳科学』黒川伊保子著(ちくま新書)
『男脳と女脳ーー人間関係がうまくいく脳の活用術』茂木健一郎著(総合法令出版)
『脳が喜ぶ!ホメ上手!ーー脳科学に基づいた褒める技!完全解説版!』吉田たかよし著(コスミック出版)

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