「怒り」をコントロールする。その方法とは?

ほめたり、ほめられたりすることは、ポジティブな状況を生み出す原動力になります。前向きな気持ちで取り組み結果につながったり、いい人間関係が築けたりします。誰だってそうしたいし、されたいと思っているのが「ほめる」という行為。トロフィー生活としても創りだしたい感情ナンバー1は「ほめる→喜び」です。

しかし! 実のところ、イライラしたり、怒ったりする状況が多いのではないでしょうか? 感情を表す言葉に「喜怒哀楽」という四字熟語があるくらいですから、「怒り」も人間に必ず備わっている感情です。「怒り」が湧くこと自体は問題ないのですが、怒っているばかりの状態は精神的によくないことは確かです。「ほめる」をお勧めする前に、まずは「怒り」をなんとかしなくては! と思い至りました。そして、どうやら「怒り」をコントロールする『アンガ―マネジメント』という方法があるらしいです。穏やかな日々を取り戻したいあなたへ、怒りをうまく転換してみませんか。

「怒り」にいいことなし!

実のところ私にはかなり重度の「怒り」の自覚症状があります。1日のうちで「ほめる」と「怒り(イライラするも含む)」の比率はどれくらいかを考えてみました。2:8いや、正直にいうと1:9かもしれません。危険水域です……、いや決壊もしょっちゅうです。それはひとまず置いておきますが、私の主な怒りの原因は、「自分はこれだけやっているのに、人はやるべきことをやってくれない!」といったところです。人は人なのだから仕方ないよねとなかなか思えず、ほとんどの場面でイライラしてしまう。自分ばかり損な役回りを担っているような気がしてくるのです。被害妄想!? さらには、イライラ怒っている自分自身に対して自己嫌悪。負のスパイラルで、ものすごいストレスも感じています。

一般にストレスは体や心の健康にマイナス効果があることがわかっています。ストレス解消のために暴飲暴食をするあたりはまだしも(よくはありませんが)、慢性的なストレスになると深刻です。うつ病などの精神的な病気や、自律神経・免疫系に影響を与えて心疾患や蕁麻疹、円形脱毛症、偏頭痛、過換気症候群などさまざまな病気を引き起こす要因になるそうです。イライラしたり、怒ったりしていること自体が不快ですから、本当にいいことなしです。

なぜ人は怒ってしまうのか?

「怒り」は、自分の価値観や考えを受け入れられてもらえない、もしくは相手の価値観や考えが受け入れられない場合に湧いてくる感情です。特に現代では、価値観や考えが多様化しているので、ズレが生じやすく、その分、「怒り」の感情も湧きやすいといえます。また、ほとんどの人の場合、怒るのはよくないと言われて育ってきているので、まずガマンしますよね? 感情のままに怒鳴り散らし発散させることは、なかなかないでしょう。実はそれもよくなくて、余計に鬱々とした状態が続き、大きな「怒り」につながってしまうなんてこともあるのです。

相手を傷つけたり、人間関係に悪い影響を与えたりする「怒り」は問題です。しかし、本来「怒り」というのは、自分の身を守るための感情といわれています。不当な扱いを受けたり、気分を害されたりしたとき、相手にわかってもらうためにあるのです。うまく表現することが必要です。

怒らないことのデメリットがあります。納得していないのに押し切られてしまい何も言えずにいると、相手はあなたが嫌がったり怒ったりしているとは思わないので、いいように使われてしまいます。人や状況に振りまわされて、イライラや怒りの感情がたまる状況は何も変わらないという悪循環に陥ります。そのうちに状況を変えられない自分に対して自信が持てなくなり、自己肯定感をも下げてしまうことになります。怒りの表現方法についてはテクニックが必要ですが、「怒り」は大切な感情表現ということも覚えておいてください。

「怒り」をコントロールには

いたずらに「怒り」の感情にふり回されないようにするためにはどうしたらいいのでしょうか。これは知っておくといい! という「怒り」のコントロール方法を次に紹介します。簡単にできることばかりなので、試してみてください。

◆「怒り」を感じたら、まず一呼吸

「怒り」の持続力はそれほど長くありません。必ず「もう! これはひどい。許せないっ!!」といったピークがあって、時間が経つにつれて徐々に薄れていくものです。後々、言わなければよかった、やらなければよかったことをしてしまうのは、たいがい怒りがピーク時のできごと。後悔をしないためには、カチンときたらまず一呼吸して、言葉は呑み込んでおきましょう。そして、あれこれ考えるのもひとまずストップします。頭の中を真っ白にすることを心がけます。その場の状況には関係ない、まったく違うことを思い出したり、考えたりできれば、なおいいでしょう。この一呼吸おくことでグッと冷静さを取り戻すことができます。瞬間的に湧いてでてきた、言ったりやったりしたら後悔しそうな言動や行動とは違う対処方法が浮かんでくるはずです。

◆愚痴は控えたほうがベスト

自分がどれだけ悔しかったか、イライラしたかを誰かに共感してもらいたくて、ついつい愚痴を言ってしまうことがあります。私自身も愚痴はストレス解消になるのでいいと思っていました。しかし、すでに終わった嫌なことを思い出して愚痴にすることは、わざわざ嫌な気持ちをもう一度経験していることになるのだとか。思い出すたびに記憶にも定着していくので、しつこい怒りを生み出す元にもなってしまいます。心の中でずっと燻ぶり続けるというわけです。ストレスは積極的に解消するべきですが、別の方法を見つけたほうがよさそうです。

◆人は「怒り」で動かないことを知る

怒って相手を思いどおりに動かそうとしてしまうことありませんか? 表面的には、怒りに臆して、もしくは面倒に感じて思いどおりな行動をとってくれるかもしれません。しかし、それで問題は解決しているのでしょうか。自発的に考えて動いてほしいと思っているのに、相手は怒られるからやるという、望ましくないパターンができてしまっているとも考えられます。お互いの関係も悪化し、ますます指示が入らなくなってしまいます。「怒り」で人をマネジメントすることは限界があります。これを知っていれば、無駄な努力をしてイライラしなくなります。

YOUメッセージからIメッセージへ

「怒り」の元になっている自分の気持ちを相手にすんなり理解してもらえれば、そもそもイライラしたり、怒ったりしないですむともいえます。相手の立場になってみればわかると思いますが、怒り口調で言われれば、やるべきだと思うこともやりたくなくなるのが人情です。怒りがちだと自覚症状のある人は、感情に任せて相手を非難する言葉をぶつけるよりも、まずは相手の気持ちを受け止めて、自分の気持ちを丁寧に説明するといいでしょう。

相手が受け入れやすい言葉選びにいい指標があります。それは、主語をYOU(あなた)ではなく、I(私)にすることです。主語をYOUにすると、どうしても「あなたは○○○だ」とか「あなたはどうしてそうなのか?」という評価や非難といったマイナス表現を含みがちの言葉になってしまいます。いくらいい評価を言葉にしたとしても、相手に否定されてしまえば意味がありません。しかし、主語をIにすれば、自分である私が感じたことを伝える訳なので、相手は否定のしようがないのです。

例えば、次のように言い換えると印象が変わりませんか?
YOU:「(あなたは)なんで見積もり一つにそんなに時間がかかっているんですか」

I:「見積もりができないと私の作業も進まないので(私は)困っています。わからないところがあるなら遠慮なく聞いてくださいね」

主語をYOU からIにすると決めつけのニュアンスが薄まり、相手の受け取り方も違ってきます。また、相手目線の声かけを付け加えると、相手の前向きな気持ちを引き出すことにつながります。

ほめるにしても次のようにいわれるほうがうれしく感じるものです。
YOU:「(あなたは)よくがんばってくれたね」

I:「よくがんばってくれたから、(私は)本当に助かったよ」

このように主語を気にしてみるだけでも、言葉の印象が変わりコミュニケーションも良好になっていくはずです。そうすれば、イライラしたり、怒ったりすることも少なくなっていくというわけです。試してみはいかがでしょうか?

 

参考文献:『アンガーマネジメント入門』安藤俊介著(朝日文庫)