「支えてくれた人たちの受章」が核心を突く

国家レベルの受章シーズン到来

秋のこの時期になると、勲章(くんしょう)や褒章(ほうしょう)のニュースが駆け巡ります。今年も11月2日付(11月3日発令)で、平成28年(2016)秋の褒章受章者772名(うち女性179名)と20団体の政府発表がありました。中でも「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方」に授与される「紫綬褒章(しじゅほうしょう)」は有名人の受章が多いため、例年大きく取り上げられていますね。今年は、小説家の伊集院静さんや、リオデジャネイロ五輪の金メダリストの方々が選ばれました。体操の白井健三さんは20歳で今回受賞者の最年少だそうです。素晴らしい!

叙勲・褒章ってどんなもの?

国を挙げての表彰制度で、毎年春と秋に行われている叙勲・褒章とはいったいどんな賞なのでしょうか。実はアワードライフの運営元である「立川徽章」は社名を見ていただいてわかるとおり、徽章の会社なので専門分野です。天皇陛下から何か賜るなんて「ない、ない」なんて思った方も、さまざまな種類・授与対象となっていますので、もしかしたら? があるかもしれませんよ。

そもそもは個人の功績や業績を国家が表彰するための制度として、明治以降に西欧にならい日本でも整備されました。叙勲と褒章の違いを簡単にいうと、国家などの公に対して功労のある方に勲章を授けることを「叙勲」、社会的分野で優れた行いや業績のある方に記章を授与することを「褒章」といいます。現制度では、これに「文化勲章」(我が国の文化の発達に関して顕著な功績のあった者に対して授与される)を加えたものが主なものになります。今回発表になった褒章の主なものが次です。

■主な褒章の種類と授与対象

  • 紅綬褒章(こうじゅほうしょう)
    :自己の危難を顧みず人命の救助に尽力した方
  • 緑綬褒章(りょくじゅほうしょう)
    :長年にわたり社会に奉仕する活動(ボランティア活動)に従事し、顕著な実績を挙げた方
  • 黄綬褒章(おうじゅほうしょう)
    :農業、商業、工業等の業務に精励し、他の模範となるような技術や事績を有する方
  • 紫綬褒章(しじゅほうしょう)
    :科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方
  • 藍綬褒章(らんじゅほうしょう)
    :・会社経営、各種団体での活動等を通じて、産業の振興、社会福祉の増進等に優れた業績を挙げた方
    ・国や地方公共団体から依頼されて行われる公共の事務(保護司、民生・児童委員、調停委員等の事務)に尽力した方
  • 紺綬褒章(こんじゅほうしょう)
    :公益のため私財を寄附した方

これを見ていただいてもわかるとおり、対象者は多分野にわたります。平成27年春秋の叙勲受章者は8050名、褒章受章者は1471名です。ほか、危険業務従事者叙勲受章者7219名(春秋合計)などを合わせれば、毎年それなりの人数です。身近に受章された方もいるのではないでしょうか。

紫綬褒章を辞退する!?

大変な栄誉である叙勲・褒章ですが、紫綬褒章に決まった作家の伊集院静さんは、産経新聞のインタビュー記事で「最初はいらないと思ったけれど」というお話しをされていました。ノーベル文学賞の発表を受けて沈黙を続けていたボブ・ディランさんといい、その思いは計りしれず、だからこそ万人に認められる功績を生みだせるのかもしれません。

ディランさんは2週間後くらいに「受賞したことを知り言葉を失った。この栄誉に感謝します」とのコメントを出されましたね。伊集院さんは、今も山口でお元気にされているお母様(95歳だそうです)の「お国があなたに差し上げたいというのを、まさかあなた、断るということはございませんよね。お父さんが生きていたら大変お怒りになる。それは私も同じで、許しません」の言葉を聞き、受章することにしたそうです。

個人に向けた栄誉ではあるけれど

「小説家として長年にわたり、人生の機微を端正な筆致ですくい上げた私小説の秀作を多く発表」などが受章の功績として挙げられている伊集院さん。やはり私小説での受章となれば、これまでかかわってきてくれた家族、人々なくてしては成り立たなかった。それを支えてくれた人たちに差し上げるための受章と理解されたとのことです。いい考えだなと思ったそうですが、最後に「歴代受章者の3分の1は同じことを言っていた。みんな同じか!」という落ちがまた素敵でした。

表彰制度では、個人や団体などの功績を特定して贈られます。しかし、実際には家族であったり、それにかかわって応援してくれる人であったり、その道に導いてくれた人であったりと特定されない人たちにも栄誉をもたらすものだと、今回の叙勲・褒章報道を経て再度認識しました。