人の行動を変える! フィードバックスキルとは

相手の行動を指摘する能力

「思ったように人が動いてくれない……」とため息をつくこと、人との関わりの中でよくありませんか? 仕事であったり、子育てや地域コミュニティーでの活動であったり、それはあらゆる場面でやってきます。それぞれの目標に向けて、自分ではない他者のやる気を起こさせなければならないのですから一筋縄ではいかないのは当たり前。これは人間社会の不変的な悩みともいえます。ただ、「うまくいかないのは相手の能力ややる気のなさのせいだ」としても解決しないところが余計に悩ましいところなんですが。実は「フィードバックスキル」がキーポイントになります。

フィードバックとは、「ある行動に対して、称賛や感謝、認知、改善などを事実に基づき具体的な形で冷静に指摘する」ことを示します。称賛や感謝、認知! そう、トロフィー生活の得意分野になります。結局、人と人とのコミュニケーションは、キャッチボールのようなものなので、フィードバックの仕方を意識することによって相手の行動を劇的に変える可能性もあるのです。今回は、みなさまのため息が一つでも減ることを願い、フィードバックについて取り上げたいと思います。

日本人には不足している人が多い!?

実はこのフィードバック、ビジネス分野ではよく指摘されていますが、日本人に不足しがちなスキルの一つだといわれています。世界有数のコンサルティング会社であるタワーズワトソンの比較調査でも、日本人社員は変えなければならない行動を指摘したり、いい仕事に対して認知・感謝をしたりといった、フィードバックをする意識自体が低いという結果を出しています。確かに日本では“暗黙の了解”を好む傾向があるために、「言わなくても伝わるだろう」と思いがちな面があります。また、できるだけ集団に同化するのをよしとするので、多少の不備であれば目をつぶって穏便に!? 済ませるなんてこともありそうです。それならば、称賛や感謝なら言えそうな気もしますが、今度は日本人ならではの奥ゆかしさというか、照れが出てきてしまいままなりません。日本の空気というか、これまで培った気質の話しですから難しいですよね……。でも、これって非常に問題のある状況なのです。

成長やステップアップのきっかけ

逆の立場で見るとわかりやすくなります。ビジネスシーンを例にとります。もし自分の上司やチームリーダーが仕事に対するフィードバックを伝えてくれなかったら? 何の指摘もなかったら、まあ、これでよかったのだろうと思いつつも、何か物足りなさを感じるでしょう。「私、かなりがんばったでしょう?」と思っていても承認が得られないので、どちらかというと達成感が半減といったところでしょうか。もちろん、いわゆる“ダメだし”であってもそうです。そのときは落ち込むとは思いますが、建設的な指摘であれば次に同じような仕事をするときの注意点としてストックする機会なのです。もしかしたら、次は求められている以上のものにするぞ! というような発奮になるかもしれませんし。

こう考えると、フィードバックを与えないということは、満足を得たり、成長したりという受け手側の大切な機会を奪ってしまっていることがわかります。これで、能力ややる気を問われたのでは、受け手側も気の毒というものです。それに適切なフィードバックをすることで、ステップアップして仕事の効率化につながるきっかけになったかもしれないのですから、フィードバック側にとってももったいない話しといえます。

ムチよりもアメを心がけて

では、どのようなフィードバックをしたらいいでしょうか。フィードバックには、「ポジティブ」と「ネガティブ」の2種類があります。前者は、好ましい行動・物事に対して、称賛や感謝、認知という表現によってフィードバックすること、後者は、改善の必要のある行動・物事に対して具体的な指導をフィードバックすることを指します。

どちらも必要なフィードバックですが、マズローの5段階欲求説にあるように人は「承認」を欲していますから、問題点よりもポジティブな面に注目してフィードバックを与えることが大切です。これは、自尊心を養うことにもつながり、やる気という動機つけにもなります。「完璧」を目指してどちらかというと「アメよりもムチ」になりがちなので、「ムチよりもアメ」ということですね。

また、意味のあるフィードバックにするには、ただの声かけだけでなく、具体的に指摘するなど、相手の成長を促すための伝え方をする必要があります。例えば「よくやったね」「ありがとう」だけでは足りません。「どのような行動がどのようにすばらしくて効果的であったのか、どのような好影響を与えたかを説明すること」も忘れないでください。好ましい行動に承認を与えることは、次に好ましい行動の繰り返しを促すことでもあります。

言葉や行動ベースでのフィードバックが難しいと感じるときは、実はトロフィーも役立ちます。足りない部分をトロフィーという物の存在で補ってくれるからです。何かを変えたいと思ったら、トロフィーを! も「あり」です。