VUCA時代の福利厚生こそ「社内表彰制度」! トロフィーがもたらす効果に注目

人材を育てる有効な手段として福利厚生の「社内表彰制度」が注目されているのをご存じでしょうか。ざっくり言うと社内表彰は、働く人も、そして企業も元気にする力を持っているからです。

先行きが不透明で将来の予測が困難なVUCA時代、企業に所属する一社員でも、どんどん自分で考えて道を切り開いていく判断力と行動力が求められています。経営者やリーダーの方々からは「そんな有望な人材ばかりならいいんだけれど……」という声が聞こえてきそうですが、埋もれているだけかもしれませんし、いないならば、育てるという手があります。人材を“資源”ではなく“資本”として捉える「人的資本」の観点からも、人材を育てる力のある「社内表彰」を有効活用する企業が増えているのです。

ここでは、社内表彰制度がもたらす効果(社内表彰の力)について紹介していきたいと思います。取り入れる際に気をつけることなどのアドバイスも記していますので、参考にしてみてください。すでに制度を実施しているという場合でも、新たな見方が発見できるかもしれません。

【効果1】従業員のモチベーションアップ

従業員や部下の、仕事への関心が薄い、やる気がない、必要最低限の仕事しかしないなどは、よく聞く悩ましい問題です。もしかしたら、「必要以上にやったところで認めてもらえない……」といったマイナスの思いを抱き、承認欲求が満たされていない可能性があります。

承認欲求と言うと、SNSで目立ちたいために行き過ぎた行為をするなどが話題になり、いいイメージがないかもしれませんが、これは大なり小なり誰しも持っている本能的な欲求です。人は満たされない状態が続くと、無気力になってしまったり、諦めてしまいがちになるのです。逆に、満たされることで、意欲ややる気が向上します。

承認欲求とは「自分は認められている」と感じることで満たされる欲求ですので、例えば、給与やボーナスなどの金銭的報酬を上げたり、相手を認める言葉かけをしたりすることでも満たすことができます。とはいえ、やはり表彰制度の方がより効果的です。

なぜならば、金銭的報酬は上がったときは高揚しますが、ある程度以上は慣れてしまい、高揚感が薄れてしまいます。また、言葉かけも大切でぜひ実施していきたい行動ですが、全従業員の前で功績や成果を表彰した方が、表彰品という形や印象に残るのでより大きな効果が期待できます。

表彰によって、会社に(上司に)認めてもらっている、期待されているという思いを受け取り、もっと成果を出そうという意識が生まれます。表彰されなかった従業員にも「あの人のように頑張れば認めてもらえる」というメッセージを送ることになり、モチベーション向上のきっかけになるのです。

【効果2】人材確保

近年、従業員と会社の関係の強さを示す「エンゲージメント」という指標が注目されています。このエンゲージメントが高い従業員は、モチベーションや自社への帰属意識が高く、仕事に深い関心や情熱を持っているといわれています。

帰属意識とは、「自身が企業の一員であると強く意識する気持ち」のことで、いわゆる愛社精神と言い換えることもできます。エンゲージメントを高めて、「会社に貢献したい」という従業員の自発的な意欲を引き出せれば、離職率の低減や、企業にとって必要な人的リソースの流出を防げるというわけです。

この従業員エンゲージメントが、社内表彰によって高めることができます。実際にエンゲージメントの向上に力を入れている企業の6割近くが、その向上施策として「評価・表彰制度の充実」を取り入れているという調査結果もあります。

日本では、少子高齢化で労働人口が減少しているだけでなく、働き方の多様化が進み、人材の確保が難しくなっています。社内表彰の活用が人材確保へのカギともいえるでしょう。

【効果3】企業理念の浸透

ミッション・ビジョン・バリューの企業全体での共有は、企業経営にとって欠かせません。企業として向かうべき方向を見失いがちな現代ではなおさらです。社内表彰は、この企業理念の従業員への浸透に効果的な働きをします。

社内表彰とは「従業員を称える」ということにほかなりません。表彰によって評価された行動が明確になることで、その他の従業員に対しても努力する方向性をわかりやすく提示することになります。企業理念にのっとった行動や成果に対して顕彰することが、社内への周知を促すのです。

社内表彰制度を取り入れることは、従業員が自社のミッション・ビジョン・バリューを理解するきっかけとなるでしょう。

【効果4】上司と部下の関係性良化

ほめたり、感謝したりを言葉で伝えることを日常的に意識して行っている人はどれだけいるでしょうか。心の中では思っていても、なかなか行動に表せない人も多いのではないかと思います。これは上司と部下という関係性でもマイナス効果です。

しかし、社内表彰を取り入れることで、これを改善することができます。上司が部下の隠れた努力や貢献を表彰しようとなったら、上司の関心や視線は自ずと部下の態度や行動のポジティブな側面に注がれるはずです。それは部下にも伝わり、部下の側も上司に対して好意的になるでしょう。このような相互作用によって、 上司と部下との人間関係が良好になっていくのです。

ほめられてモチベーションが上がり、業績アップにつながる例もあります。積極的に部下とコミュニケーションをとり、ほめ上手な上司が増えることで、社内の士気も上がり部下の成長を期待できます。

【効果5】職場環境の良化

アフターコロナでリモートワークが浸透し、コミュニケーションの非対面化が進みつつあります。従業員間のコミュニケーションが極度に少ない状態では、従業員が「自分は組織から必要とされているのだろうか」「正当に評価されているのだろうか」といった不満を抱えてしまいがちです。予期せぬ退職を生まないためにも、社内表彰を活用するのがお勧めです。

すでに述べたように、人はまわりから認められたという承認欲求欲求があり、表彰されるとそれが満たされます。しかも公的に認められることで、自分の能力に対する自信がつくのです。

とりわけ日本人は周囲との関係の中で満たされる傾向が強いので、表彰され周囲から認められたと実感すると、他人の前で堂々と発言できるようになったり、周囲への発言力が増したりといった人間関係上によい影響を与えます。

個人だけでなく、部・課やチームといった集団を対象にしてもいいでしょう。みんなで賞をめざせば自ずと職場の士気が上がり、受賞すればさらに結束が強まってチームワークもよくなります。

活力のない組織は、メンバー同士がお互いのことを理解していない傾向にあります。お互いをほめ合う表彰制度を取り入れて、相互にサポートし合える環境づくりを進めるのもいいでしょう。社内表彰制度は単に賞をあげるだけでなく、企業と従業員、上司と部下、同僚同士のコミュニケーションとしての役割も担っています。

以上、主な社内表彰効果を取り上げました。どのような賞を取り入れたらよいかは次回に譲りたいと思いますが、社内表彰を取り入れる際の重要なポイントは「公平」です。もし偏りがあると、かえって不公平感で不満を抱かせてしまうので注意が必要です。

例えば、営業職など数値で評価できる職種は表彰しやすいのですが、バックオフィス業務など頑張りが数字に表れない職種もあります。

社内表彰制度では、仕事の成果を称えるだけではなく、努力している姿勢を奨励したり、職場に良い雰囲気を与える働きをクローズアップしたりすることも大切です。社員全員が表彰の対象になるような賞を設置することを心がけるといいでしょう。