上司のほめ方に不満を持つ人が4割弱!?

社員育成や子どもの教育など人を育てる現場で「ほめる」は一つのキーワードになっています。アワードライフでもその効果をお伝えしているように「ほめる」ことは、相手のやる気や意欲を刺激する有効的な手段となります。ところが、そのほめ方に不満を持つ人もいるようです。今回は「ほめる」の本質を探りたいと思います。

「ほめベタ」な日本人

前提として、日本ではいまだ多くの人が「ほめられていない」状況にあります。株式会社サーベイリサーチセンターが2014年に行った『職場における「ほめる効果」に関するアンケート(SRC自主調査004)』によると、「部下をほめにくい」と感じたことがある上司は68.3%。なんと7割にも及びます。理由としては、「ほめる部分が見つからない」「ほめるタイミングがつかめない」「調子に乗るのではないかと思う」「ほかの部下の手前、特定の部下をほめにくい」などが挙げられています。

「ほめにくい」と感じる理由を見ると、「ほめる」基準や方法を高く難しく設定しすぎており、結局はほめることが苦手な人が多いという印象を持ちました。この「ほめベタ」の背景には、日本特有の価値観も関係しているのではないでしょうか。「阿吽(あうん)の呼吸」や「以心伝心(いしんでんしん)」という言葉がありますが、この「言葉にしなくても心が通じる」というのは、日本人の多くに好意的に捉えられています。雰囲気を察しできない様子を「KY」(K=空気、Y=読めない)と揶揄するのも日本らしい発想ですよね。ほめることに対しての苦手意識は、「わざわざ伝えなくてもわかってくれているだろう」という思考も絡んでいるのだと思います。

日本の美徳はもう通用しない!?

言葉にしなくても相手が察してくれるなら、これほどいいことはありませんが、残念ながら実際にはそうはいきません。人間は得てして、自分の考えているように、相手も考えると思いがちです。でも冷静に考えれば、性差や年齢・年代、育ってきた環境、性格、立ち位置も違うわけですから、同じような意見になるわけがありません。例えば、身近な人が自分に対して不機嫌な理由がわからない、という経験はありませんか? 思い当たる節があると思います。パートナーや家族といった親しい関係でも、言葉や態度で示さなければわからないものです。ではこれが上司や同僚、部下との関係であれば、もっと伝わらないといってもいいでしょう。

「言わずともわかってくれるはずだ」という概念は、上下関係が固定されていた昔ならいざ知らず、現代の日本ではもう通用しないのです。誰しもが相手に伝える努力を求められています。

不満なほめ方、満足なほめ方

前述のサーベイリサーチセンターの同調査で、「上司からほめられるとやる気が高まる」(高まる+やや高まる)と回答している人は80.7%と、実に8割です。苦手だのなんだの言わずに士気の高まるほめ方をマスターしたいところですが、「ほめる」で難しいのは、単にほめればいいわけではないことです。これがわかっているだけに苦手意識も出てくるのでしょう。「上司のほめ方に不満である理由」も挙げられていますので次に示します(図1)。

図1 上司のほめ方への満足度と不満である理由

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(「サーベイリサーチセンターが実施」)

「口先だけ」「公平じゃない」「気まぐれ」……と、ますますほめるのが苦手になりそうな厳しい指摘が並びます。では、どんなほめ言葉が適切なのでしょうか。同調査にあった「上司からもらってうれしい『ほめ言葉』」からピックアップしてみました。「ひとつの仕事の背景まで把握した上で、労いの言葉をもらえるとうれしい」「工夫したことやその姿勢を認めてもらうような言葉」といった仕事ぶりをしっかり見てくれている具体的な評価の言葉や、「役立っていると実感できる言葉」「いかに自分が必要かを伝えられるとうれしい」「気持ちがこもった『ありがとう』」といった自分自身が認められていると感じる言葉、感謝の言葉が、うれしいほめ言葉として多く挙げられていました。参考にしてみてください。

ほめベタを解消する奥の手はコレ

最後にスムーズなほめ方ができるように、「ほめる」についてもう少し掘り下げておきたいと思います。「ほめる」には、一定の水準を超えたとき、その結果に対する評価というイメージがあります。そのため、満たない場合は「ほめにくい」状況が生まれてしまいます。そこで視点を変えて、「認める」に注目する手があります。「ほめる」と「認める」は同じようなものだと思うかもしれませんが、大きな違いもあります。「認める」の場合、結果だけを見るのではなく、例え水準に達していなくても過程にある努力や工夫に目を向ける意味もあるのです。すべての人間は「認められたい」という承認欲求を持っています。「ほめる」に加えて、「認める」という観点からも、相手にプラスのメッセージを伝えることで、より効果的なほめ方ができるのではないでしょうか。