チャレンジコインって!? アメリカから学ぶ表彰文化

アメリカでは、まるで挨拶をするようによく人をほめます。例えば、英語のほめ言葉を見てみるとわかるのですが、ほめる単語やフレーズがこれでもかというぐらいに出てきます。ほめる度合いやニュアンスの違いによって使い分けがあります。一方、日本のほめ言葉といえば「がんばりましょう」「よくできました」「たいへんよくできました」くらいでしょうか!?  そもそも“ほめる”について、そこまで言葉を追求していないよね、というのが正直なところです。これは、アメリカに表彰文化(ほめる文化)が根づいているからで、実は言葉だけに限りません。ここでは、アメリカならではの表彰アイテムに注目しました。みなさんは「チャレンジコイン」をご存じですか? 今回は、このWonderful(素晴らしい!)なアイテムから表彰文化を見ていきます。

個人的に作る表彰アイテム!?

日本では、表彰状やトロフィー、メダルなどの表彰品を作ったり、贈ったりする場合、スポーツ関連の団体やチーム、会社、学校といった組織によるものがほとんどですが、アメリカでは違うようです。もちろん表彰文化の根づく国であるアメリカでは組織単位での表彰も盛んなのですが、個人レベルでもジャンジャン作ります。

その一つが、ある米軍将兵から始まったという表彰アイテム「チャレンジコイン」です。これは、階級章や勲章のように軍や国から授与されるものではなく、将兵たちが個人的に作る記念メダルになります。実物はというと、直径約4cm前後、厚さ約3mmの円形のものがポピュラーで、ずっしりと重い金属製。表裏の両面に、部隊章や階級、部隊マーク、作戦名、関連図柄などが刻印されていて、かなり凝ったデザインのものもあります。自費で作るということですから、記念碑的なものを形に残すのが好きなお国柄もあるのですかね!?

仲間の証し、戦う男たちの誇り

チャレンジコインは、部隊演習や作戦への参加記念にチームメイトで作って所有したり、部隊に配属された新兵に上官がコインを授けたりするもので、仲間の証しといった意味合いを持ちます。また、部下の働きをほめたり、感謝を表したりするときや、他部隊との交流としてトレードするなど、コミュニケーションツールとしても活躍します。現在では、米軍だけではなく、CIA、FBIなどの国家機関、警察、消防関係などでもチャレンジコインが作られていて広まっているそうです。意匠を凝らしたメダルの仕上がりの良さと、トレーディングといった男心をくすぐる付加価値もあいまって、コレクションアイテムとしての人気にも火がついているとか。

そもそもの由来はというと、ある米軍パイロットが出撃前に部隊全員分のメダルを作り、メダルの数が欠けることなく無事に帰還できるようにと祈ったことにあります。なんと、そのパイロットは敵地にて撃墜されてしまったそうですが、メダルの誓いを守るために奇跡の生還を果たしたという映画になりそうな話しが元になっています。チャレンジコインの語源もここからきているそうです。チャレンジコインとは、仲間の証しであるとともに、命がけで戦う男たちの誇りを表すものでもあるのです。

握手をするときに、さり気なく

チャレンジコインの渡し方もなかなか凝っているのでご紹介します。握手をするときにチャレンジコインを手にしのばせておき、相手の手の中に滑り込ませるということですが、キザというか(失礼……)気持ちが盛り上がるというかグッときますよね。気持ちを言葉や態度で表すことも大切ですが、形あるものだからこそ伝わることがあります。命がけの仕事の現場でチャレンジコインを作ることが増えているという意味がわかるような気がしました。

また、将校クラブや基地内のバーでは、「チャレンジコイン!」と声が上ってコインがテーブルに投げ出されたら、ほかの将兵たちも後に続いてコインを出すというやり取りがあるそうです。コインを持ち合わせいない人は全員に酒をおごる。もし全員持っていたら、言い出した人がおごらされるというものです。ゲーム感覚で行うのだと思いますが、根底には「仲間である」という確認行為があるのではないでしょうか。

表現に乏しい日本にこそ

日本でも、仲間意識や一致団結、熱い気持ちは体育会系の方たちならありそうですが、一般的にはシャイな人たちの集団といわれています。2007年ユーキャン新語・流行語大賞の候補に「KY(空気が読めない)」に挙がったことに象徴されますが、その場の空気を読み、なんとなくの総意を汲んで行動することがよいとされている日本。内心で違う意見を持っていたり、逆に感心や感謝をしたりしていても、なかなか言葉で表そうとしません。「言葉にしなくてもわかるよね?」というわけで、自分の感情や意見を露わにすること自体が稀(まれ)です。が、エスパーではないのでわかりません。もっといえば、わかってもらっていると錯覚しているだけともいえます。自分にとって都合のいいように解釈していることもあります。

チャレンジコインのような表彰アイテムを取り入れることは、意識を変えるチャンスになるかもしれません。アメリカでは、結婚式や卒業記念、会社の業績コンテストの参加記念、ビッグプロジェクトの達成記念など、一般にも普及しつつあるチャレンジコイン。日本ではまだ珍しいアイテムですが、興味を持った方は自作して活用してみるのもいいかもしれません。