イタリアの個性-アルティジャーノ(職人)-に日本を重ねる

イタリアと日本の共通点

アモーレ(愛)の国イタリアでは、出会った女性を口説くのは男性の礼儀だと聞いたことがある。もっともこれは、ステレオタイプな話として定着したものなのかもしれないが、イタリア人は明るくおおらかで細かいことは気にせず、個人主義だといわれている。平均的な日本人の気質とは正反対ともいっていい国民性だが、実はイタリアと日本には通じる部分がある。一つは環境だ。イタリアも南北に細長い国土を持ち、90%は山間部だという。四季のある温暖な気候という特徴も日本と似ている。そして、国土や気候以上の共通点がイタリアと日本にはある。それは、伝統的な技術を継承する「職人」の存在だ。

「量」よりも「質」の流れ

近年の世界的な動きとして、食やモノなどの大量生産による生活の均質化や、それらを供給するための生産やサービスの合理化が急速に進んでいる。必要なものは安く簡単に手に入る。日本でいえば、全国津々浦々に同系列のコンビニや郊外型モールができ、金太郎飴のごとくどこを切り取っても同じ風景になりつつあるのは均質化の表れだろう。まったく便利な世の中になったものである。しかし、大きな流れができれば、逆らう流れも出てくる。均質化や合理化に対抗するカウンターカルチャーとして、イタリアから発信されている「スローフード」を始め、伝統工芸品の躍進もその一つといえる。

職人―アルティジャーノ―の存在

なぜ、イタリアからなのか。背景には、多様性を重んじるイタリアの文化的特徴がある。イタリアという国に対する印象は、各地方の郷土色が色濃いことから、どこの町に行ったかによってガラリと変わってしまうほどだといわれる。これには、中世イタリアより発達してきた自治都市「コムーネ(comune)」の存在が関わっている。コムーネは自立性が高く、その地方の自然環境に合わせて独自の社会システムをつくり上げてきた。現代のイタリアでも、いわゆる地方自治体として残るコムーネの概念が、地方独特の個性的な芸術や生活文化を築き上げ、カンパリイズモ(郷土主義)として連綿と続いているのだ。

その象徴ともいえるイタリアの職人―アルティジャーノ―が手作業で作りだすモノたちには、高いクオリティと価値が認められている。職人(アルティジャーノ)による経営が多いという中小企業が圧倒的に元気であるという点にも、それは見てとれる。イタリアでは中小企業の数自体が非常に多いのだ。輸出全体を占める中小企業のウェイトも高く、海外市場で存在感を示すのも中小企業である。ルネサンス以後、今に至るまでその伝統技術を引き継ぎ、革新し続けているからだ。

“伝統”という個性

イタリアは、多様性を重視して、“伝統”という個性を武器に世界の文化をけん引しているといえる。なぜ“Made in Italy” (メイド・イン・イタリー)のトロフィーを立川徽章が取り扱っているのか? の答えはここにある。私たちは、イタリアのアルティジャーノに、日本が置き去りにしてしまっているように見える、伝統工芸を継ぐ職人のあるべき姿を見たのだ。ますます個々のオリジナリティーが尊重される時代となるだろう。日本に多くの個性があることを私たちは知っている。だからこそ、ジャパニーズ・アワードという切り口からそれらを発信していきたい。なぜならそれをイタリアが気づかせてくれたから。