トロフィーも報酬の一部という考え方

“働く”ということを考えてみよう

人はなぜ働くのでしょうか? 働く意味とは?

いきなり就職面接みたいな質問になってしまいましたが、みなさんどうでしょうか。就活生なら「夢の実現」や「社会貢献」など仕事への意欲を語ってアピールすることを勧めますが、多くの人の本音では「生きるため」「生活していくため」という理由は外せないでしょう。ある程度、お金がないと現代社会で暮らしていけませんから……。つまり、ほとんどの人は金銭的報酬を得るために労働しているといえます。しかし、WAW (全米人事協会)によると、なにも報酬は金銭的なものに限らないといいます。実は、この“非金銭的な報酬”に注目すると、冒頭の質問の答えも違ってくるかもしれません。

企業が報酬として認識するべきもの

雇う側(企業)の立場で考えてみます。労使関係は経営の要ですから、企業は従業員を雇うために金銭的報酬を算段します。会社のためによりよく働いてもらうためには、給与アップや新たなポストの用意などが必要になるので、さらに経費を考えないとなりません。金銭的報酬の果たす役割はかなり大きいため、企業も重視しがちです。ただ中小企業に限らず金銭的報酬が頭打ちになってきているのは周知のとおり。そのため「思うように評価されていない」という働く側の不満を生み、悪循環を起こしている例もあります。

しかしこれは、非金銭的な報酬に目を向けることで、変化をもたらすことができるかもしれません。WAWは、「金銭的報酬」のほかに企業が報酬として認識するべきものとして、「福利厚生」「仕事上の経験」があると指摘しています。

非金銭的な報酬とは

さて、「福利厚生」とは、企業が従業員とその家族の生活充実のために設けた賃金以外の諸手当や、社員寮・住宅、保養施設などの福利厚生施設などがそれに当たります。企業勤めの方なら充実の差こそあれ恩恵に預かっているのではないでしょうか。非金銭的な報酬とされていても、企業側からすると金銭的な負担が大きいので、なかなか充実されづらい項目ですが……。

次の「仕事上の経験」になると、話しは変わります。具体的にピンとこないかもしれませんが、「社員への感謝・認知がある」、「仕事と私生活の調和のための仕組みがある(いわゆるワークライフバランスのこと)」、「組織文化に共感できる」、「キャリア開発の機会がある」、「労働環境がいい」などが挙げられます。福利厚生に比べて、さらに非金銭的な印象です。これも報酬? と思われるかもしれませんが、WAWの近年の研究によると、これまであまり注目されてこなかったこの「仕事上の経験」について、社員は報酬として重視するようなっているという結果が出ているそうです。

内面的な充実が働く意欲へ

人は金銭的報酬以外にも、 “やりがい”“誇り”“生きがい”などといった内面的な充実を働くことに求めているということがわかってきたのです。金銭的報酬が充実されづらくなった今、この部分は注目です。なかでも「表彰制度」を活用することで得られる「社員への感謝・認知」は、もっとも取り入れやすい報酬ではないでしょうか。表彰は、金銭ではなく名誉を与えることを重視するため、費用はそれほどいりません。それどころか金銭的な色合いが濃くなると、かえって感謝や認知といった気持ちが伝わりにくくなってしまいます。

表彰制度を取り入れるとなると、社員の成果やプロセス、努力を見ていき、行動や成果に対して表彰していく必要があります。しかし、それにともなって、感謝や認知を得ることで社員がより高度な仕事へとステップアップし、会社も成長していくことができるのです。経済環境の厳しい今の成長戦略としても、社員のプラスαの報酬としても、「表彰制度」をもっと活用してみませんか。